論文・著作
Show the flagの真意に迫る
2001年10月執筆
<簡単で難しい三つの単語>
先日、米国のNSC(国家安全保障会議)の知人から「We'll need Japan's help」とe-mailが届いた。ちょうど、その2日ほど前に、アーミテージ国務副長官が、「Show the flag」と柳井駐米大使に述べていたので、私はその知人に「We'll show the flag」と返信した。
最近、英語教諭の友人から「Show the flag」は、どういう意味なのか?と問い合わせが来た。確かに、簡単な英語であるが、その真意を計るのは、些か困難である。
日本では、一部の議員が辞書を片手に「それは、自衛隊を派遣してくれ、という意味ではなく、英語としては、『立場を鮮明にする』と訳する」と述べ、また、他の議員が「誰が、誰にそんなことを言ったのか」との質問に、首相は「よく知らない、『Show the frog』ですか、あっ間違った、flagでした」と旗と蛙を間違えてしまった。相変わらず、議論のかみ合わない日本の議会には、落胆させられる。
辞書を紐解けば「Show the flag」の意味は、1、外国の港を公式訪問する。2、要求を突きつける。3、主張を鮮明にする。4(口語体)、パーティーなどに一応顔を出す、となっている。前出の指摘は、間違ってはいないが、現状を鑑みれば、他の隠された真意があることは想像に難くない。
<flagは何を指しているのか>
現在、私は外交・安保に関する意見交換をするために、さまざまなシンクタンクを訪問している。そこで、アーミテージ氏に非常に近く、日米安保関係にも深く関わっている人物に今回の発言の真意を質してみた。彼は、日米安保のための新ガイドラインを書き、昨年、話題になった「アーミテージレポート」の一部も書いた人物で、米国防総省日本部長も勤めた経験がある。
彼に、上記の1_4の意味がアーミテージ氏の意図と合っているのか、聞いたところ「何ですか、それは?(特に4の)パーティー?どこのパーティーの事ですか」と一蹴された。当たり前である。それは、私も分かっていたが、聞かないと話が始まらないと思い聞いてみたのである。
そして、彼曰く、「flagは自衛隊を示している」と断言した。もちろん、彼は、アーミテージ氏と同一人物ではない。従って、100%正解ではない。
<Be there:そこにいること>
私も彼に同意見である。flagは自衛隊を示していると考えている。加えて、彼は「アーミテージ氏はShow・The・Flag、と非常にシンプルで、いい言葉を使った」と述べた後、「つまり、『Be there』なんですよ」と言い、「アーミテージ氏は三つの単語を使いましたが、私は二つの単語で、更にシンプルですよ」と無邪気に笑って見せた。
結局のところ「You should be there」ということである。私は、彼等のようにスペシャリストではないので四つも単語を要してしまう。
つまるところ、そこに居ること、そこで何をするのか、そこで何をしたいのか、と言うことが重要なのである。そして、彼等の言動から分かるように、「あれをしろ」とか「これをしろ」、そして、「こうしてくれ」というような具体的な要求はないのである。これが何を意味しているのか、つまり「あなた方で考えてください」ということである。
また、彼は「日本は、湾岸と同じことを今回もするのですか」と聞いてきた。そして、「YesかNoかで答え下さい」と言った。日本の国益を第一に考えれば、彼への答えは、簡単なことである。そこでも、私は「Yes, We'll show the flag」と応答した。
しかしながら、そのためには、しっかりとした準備と法整備を早急に計らなければいけない。すくなくとも、海上自衛隊は今回の事態に対して非常に有効的に活動できる能力を有している。海上自衛隊の隊員達は、長年努力し、準備が出来ている。準備が出来ていないのは、柔軟性を欠いた内閣法制局といつまで経ってもかみ合わない議論をしている政治家達だけである。
辞書を片手にパフォーマンスもいいが、それだけでは、国際社会では通用しない。のん気な事をしている間にも、どんどん状況は変化していき、今後更なる犠牲者が出る可能性も否定できない。早く準備を整えて、「You have to be there」。結局、単語は五つになってしまった。