論文・著作

神の盾Aegis 
−3− 日本の防衛力

2003年2月執筆

いまや日米同盟が、日本の平和と安定にとって極めて重要であることは、周知の事実である。アフガンにおける米国のテロとの戦いに日本がイージス艦を派遣したことが、日米同盟の確固たる堅持を示す象徴としてとらえられている。また、アーミテージ米国務副長官は、毎日新聞北米総局に自ら電話をかけて次のようにコメントしたらしい。日本政府がイージス艦派遣を決定したことについて「小泉首相の指導力を示す素晴らしい例だ。特にバリ島(の爆弾テロ事件)後の日本のこのような努力を大いに評価する」と首相をたたえた。さらに「アジアの安定を心配しているすべての人々がこの決定を高く評価している。我々は非常に興奮している」と述べたようである。 どうやらイージス艦派遣は、日米同盟の良好な状態を保つために非常に役立っているようだ。

しかしながら、イージス艦派遣の是非を巡る議論の中で見逃されている日本の防衛にとって重要な論点がある。それは、日本の防衛力の問題である。当初、米軍支援の方法として防衛庁において出た案は、「AWACS(Airborne Warning And Control System:早期警戒管制機)を派遣してはどうか」というものだったそうだ。だが、「日本には、AWACSは2機しかないので、あちらに回せない」との結論に達し、最終的に4隻あるイージス艦のうち1隻を派遣することなら可能と判断したようである。

では、実状はどのようになっているのだろうか。現在派遣されている部隊だけで、実は海上自衛隊も艦船のやりくりが大変になってきている。護衛艦も訓練期間と修理、その他任務と休みなく動いており、補給艦は3隻で交代している。つまり、本来機動部隊用の補給艦が国内実働1?2隻という状態が続いているのである。また、イージス艦も今後継続して派遣するのであれば、護衛艦以上にやりくりが大変になるのではないだろうか。インド洋では現在、イージス護衛艦としては、「きりしま」が、海上自衛隊の行なっている米英艦艇への燃料補給活動に参加している。だが例えば、イージス艦の交代時期が訪れ、次回も今回と同様にイージス艦を派遣した場合、日本に残っている3隻のイージス艦のうち1隻が日本を離れてインド洋に向かわなければならない。インド洋に着くまでには2〜3週間程度かかる。交代のためのイージス艦がインド洋に到着後、「きりしま」は、任から離れ日本へと帰ってくるわけだが、日本に着くまで2〜3週間程度かかる。ということは、最大6週間、日本の防衛にあたれるイージス艦は、2隻しか存在しないことになる。その間に、1隻が修理の必要性があれば、国内での実働は1隻という事態になることも予想される。これは確実に日本そのものの防衛力の低下と言えるのではないか。

テロ対策特別措置法では、「自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度において、協力支援活動としての物品の提供を実施することができる」とされている。つまり、自衛隊の防衛力が著しく影響されない範囲で活動する、あるいは、誤解を恐れずに述べれば、自衛隊の余剰防衛力をもって活動にあたる、ということである。このような考え方は、今回と同様に自衛隊が海外に派遣されるときは、常に考慮されている。例えば、いわゆるPKO法においても同様で「自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度において、実施計画に定めるものとする」とされている。従って、自衛隊の海外での活動に起因して、日本に於ける自衛隊の防衛力は低下しない、という大前提に成り立っている。だが、実状を見ていれば、疑問を抱かざるを得ない。ましてや、現在、北朝鮮という重大な不安定要素が存在している最中である。

そもそも、自衛隊は、日本から遠く離れた海外で展開して作戦活動に従事することを想定してその防衛力を整備されていない。今後もテロ対策や地域紛争など国際社会が抱えている諸問題を解決するために自衛隊の能力が求められ、今後も派遣を積極的行なっていくのであれば、自衛隊そのものの体制を見直さなければならない。今回のイージス艦派遣は、自衛隊の体制を再構築しなければならないことを気付かせてくれたという意味では、イージス艦派遣によって日米同盟の信頼関係が更に深まったことよりも意義深かったように思える。

2003年2月執筆

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